ねっとり解説 クイーンズ・ギャンビット6

ねっとり解説 クイーンズ・ギャンビット6

monopaul-jp のアバター
| 0




※重要なネタバレとアレな内容を含みますので
苦手な方はブラウザバック




[00:00] 中断
adjournでしょうか?彼女の進撃が止まってしまうというものですかね。

[01:20] レベンフィッシュ
高レベルな二人は脳内盤での対局余裕です。
ベスはいまだにレベンフィッシュを好んでいるようです。
この定跡は攻撃的ですがトップ間ではあまり見られない定跡なので、まだアンサウンド気味の攻撃を繰り返す癖が抜けてないようです。

[06:40] プレイヤー
Wolfgang Uhlmannは実在するプレイヤー。


Jonathan Penroseも同様です。


ベニーは彼女とボルゴフのゲームをすべて並べることを提案します。
正式に契約しているわけじゃないですが、セカンドとして教えようってことですね。

[07:20] ポーン
オリジナルはバックワードポーンですが単にポーンと訳しています。スマートですね。
作中に出てきたFred Reinfeldさんの邦書。

作中に出てきたReuben Fineさんの邦書


[09:00] チーム戦
adjourn中にソビエトはチームで検討することによって無類の力を発揮すると述べます。
これはずるいことではないのですが、こっちは一人で検討してるのにロシアtop4が雁首揃えて検討する姿を想像すると嫌になりますね。
中断の申し出はある種の死刑執行の気分でしょうか?

[10:15] プロブレム
プロブレムフリークがベスにこの問題が解けるかと問いかけます。
彼女に棋力では到底かなわない、だが得意のプロブレムだったら俺のほうが知識で上だろうと内心思っていたのだと思います。
だがベスは即答、超越した棋力の前にあらゆる問は無意味でした。



[14:23] 同時ブリッツ
ベスは以前ボロボロの戦績だったのですが、そうとう腕をあげたようで彼らをボコボコにしてしまいました。
全部の棋譜載せるのはめんどくさいのでモーフィーだけ載せます。これは暗譜おすすめです。
当然ベニーワッツはモーフィーの黒番のような弱いプレイヤーではないのですが、演出として面白いですね。



[20:50] 記者
「あなたはチェスをするにはグラマラスすぎるとチェス連盟から指摘がありましたがいかがでしょうか」という記者もチェス連盟も随分と失礼な物言いですね。
ボルゴフ対策として時差ボケ対処をあげました。
覚えておいででしょうか?
3話目あたりでエレベーター中に「ベスは時差ボケでうまく指せないだろう」と仲間内で
囁きあってたのに対する意趣返しですね。
あとロシア語も用いて直接自分の言葉が伝えるようにしました。

[25:00] クレオ登場
彼女はバーで飲まないかと誘ってきますね。
私はこのシーンを見て、実はKGBからの差し金で酒を誘ったんじゃないかと
深読みしましたが真相はどうでしょうか?みなさんの意見も聞いてみたいですね。
実はペトロシアンはフィッシャーに卑怯だと糾弾されたことがあります。
あのロシア人らは自国同士の対戦の時は合意ドローを使って、僕との対戦には全力を出す。
対局中になんらかのサインを出してるときだってある。許せない、とね。
ある種卑怯さ、狡猾さを想起させるのがボルゴフもといペトロシアンと思ってます。
クレオがベスと接触したのは相当前なのですが、ペトロシアンは20手前からタクの匂いを嗅ぎつけ準備することで有名。
ボルゴフの棋力を疑うというよりも、おつきの人が勝手に計画してやったのだと思ってます。

[29:17] 一話目の冒頭のシーンへ
ようやく一話目回収ですね。

[30:30] 二日酔いで水をがぶ飲み
酒を飲みすぎて遅刻した挙句、二日酔いのせいで喉が渇く渇く。
万全の状態とはいえませんね。
酒におぼれたアレヒンみたいだぁ。ボルゴフはそんな隙をきっちり咎めて悠々と勝利します。
序盤はナイドルフBc4 ここでもフィッシャーを想起させます。


[31:10] クイーン交換
白はクイーン交換を提案、これは定跡とベスの棋風から敗北宣言のようなものですね。
しかも黒は拒否、黒はどっちにしても楽しい局面というのが伝わってきますね。

[32:32] 手が泳ぐ
自分の中ではもう決まり切ってる手なのに、この手をさしたらジリ貧っていう状況なのでしょう。
非常によくチェスプレイヤーの心理を描いてます、監修がカスパとパンドルフィーニなだけありますね。棋譜はこちら





[52:45] 初めての公式戦の相手
ベスはすでに覚えてないのでしょうが、相手からすれば伝説の相手と戦えたと誇らしいのです。
あまりにも光り輝く存在で、いろんな人に自慢して周りたいクラスのお話なのです。
強者は気づかないうちに周りを惹きつけ、時には傷つけることもあるので注意が必要ですね。

[54:30] ベルティックとの再会
彼は夢の電気技師を諦め、スーパーで働いているようです。車も買い換えましたがベルティックが
「This one's more me.」と発言してるのでおそらくグレードを落としたのだと思います。
以前の車よりも高いのを購入して「これは俺に似合ってる」なんて言わないでしょう。
ベスの目から見て、成功した人生ではないのですが彼は満足した生活を送っているようです。
フィッシャーがチェスの頂点を極めて幸せになれましたか?というような問いを、ドラマが我々に投げかけてるようです。

最後に・・・私個人としてはベスを計算型のプレイヤーと考えてます。
表現上の問題とは思いますが、脳内盤の演出が非常によく使われてますし。

例えばですが真の直感天才型プレイヤー 
ミハイル・タリが対局中に考えているのはこのようなことです。
The Life and Games of MIKHAIL TALより私訳

タリ「すごく複雑で混沌とした局面だったんだ。
結果として僕の頭の中はあらゆる手が積み重なった状態
tree of variationsに満たされていたんだ。
トレイナーが教えてくれたように小枝に分割したのだけども、
それは信じられないくらいの量になってしまったのさ。
その時、突然だけど、コルネイ・チェコフスキーが書いた連句を思い出したのさ。

"あら、泥沼からカバを引きずり出すことはなんて大変な仕事なの"

チェス盤とカバの関係はわかんなかったし、
観衆はみな僕が局面について悩んでいるだろうと思っただろう。
でも僕はどうやってカバを引きずり出そうか悩んでたんだ、可哀そうな方法も含めてね。
レバーを使うのか、ヘリを使うのか、はたまた紐梯子を使って引き上げるのか。
長い考慮の上、エンジニア―に僕の負けを認め、意地悪くこう告げた。
”よし、そのままにしておこう”
その瞬間僕の頭からカバが消えて、どっかに行ってしまったチェス盤が帰ってきた。
途端にその局面はそれほど複雑には見えなくなっていた。
なぜだかわかんないけども、全ての変化を読むことは不可能であることを理解した。
でも僕の次の手のナイトサクリファイスはとても自然で、直感に基づいていて、
おもしろいゲームを約束してくれる。
どうしてその手を指さずにはいられようか?

次の日さ、新聞を面白く読ませてもらったよ。
ミハイル・タリは40分間の長時間にわたってあらゆる変化の正確な計算をしていたそうだ。」

もちろんドラマの演出中にカバを引き上げるとかイミフなことをやってたらアレですし、
異例中の異例とは思いますが本当に脈絡もなく良い手を直感的に選ぶことのできる人はいるものですね。