最強エンジン達から見た最強定跡
TCECというのをご存じでしょうか?
最強のエンジンを決めるトーナメントで今年はSFを退けてLC0が優勝しました。
SF VS LC0 の100局から私なりに考えたことを書いていきます。
そのトーナメントでは指定局面50個を白黒指すので全100局のうち
白勝ち 27局 ドロー71局 黒勝ち 2局
指定された局面はほとんど先手の有利を示していることが分かります。
SFは短手数勝ち対局1位から7位を独占しており、
優勢から勝勢につなげるのが上手いタイプと推測。
LC0が勝っている対局は100手を超すものも多く、
負けない形を作ってゆっくり勝ちに行くタイプと推測。
さてここから白が2-0で勝ち越した局面や私がチョイスした局面を紹介して
最強定跡というのを考えてみたいと思います。
1. e4 c5 2. Nf3 e6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 d6 6. g4 a6
SF-LC0 白勝ち 53手 短手数勝ち部門 4位
LC0-SF 白勝ち 107手
6.g4!はケレスアタックと呼ばれており、Scheveningenにたいして有力とされている作戦です。
人間同士の戦いでも当然強力で、マスター間でもリチェスユーザー間でも高い勝率を誇ります。
シシリアンを黒で最初に学ぶ際はナイドルフ、ドラゴン、カンをお勧めします
1. d4 d5 2. Nf3 Nc6 3. g3 Bg4 4. Bg2 Qd7 5. O-O O-O-O 6. c3
SF-LC0 白勝ち 42手 短手数勝ち部門 1位
LC0-SF 白勝ち 173手
2...Nc6?! チゴリンですね。
基本d4d5型ではcポーンの上にナイトを置く形は弱い手になりがちです。
そのうえ黒はロンキャスということで白の攻めのほうが明確に早いでしょう。
短手数勝ち部門1位ということで最強候補の形です。
1. e4 c5 2. Nf3 e6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Qb6 5. Nb3 a6 6. Nc3 d6 7. Bf4 Nf6 8. Qd2 Be7 9. O-O-O O-O
SF-LC0 白勝ち 46手 短手数勝ち部門 2位
LC0-SF 白勝ち 187手
Judit Polgar VS Nigel Short
https://www.chessgames.com/perl/chessgame?gid=1111336
二人の試合では10.g4と突き捨てて白が快勝しているのですが、
実はf3のほうがよかったんじゃないかと理論的な議論があるのかもしれません。
LC0もSFも10.f3と穏やかな手を選んでおり、この局面での最善手はなんだったのかは
神のみぞ知るというところですかね。
1. e4 d5 2. exd5 Qxd5 3. Nc3 Qd6 4. d4 Nf6 5. Nf3 a6 6. g3
SF-LC0 白勝ち 51手 短手数勝ち部門 3位
LC0-SF 白勝ち 113手
Qd6スカンジですね。
d5Qがどこに引けばいいのかというのは議論の余地がありa5、d8、d6の三つの選択肢があります。
この中でもアクティブで流行りなのはQd6なのですが、白がズバッと勝ってますね。
やはりSGM間でもめったに見られない定跡なので理論的弱さは明白というところですかね。
なおカールセンやアリレザもラピッドだと使っているので、気になる変化ではある。
1. e4 b6 2. d4 Bb7 3. Bd3 e6 4. Nf3
SF-LC0 白勝ち 96手
LC0-SF 白勝ち 181手
オーウェンですね。まあ普通に白がいいでしょう。
オーウェンとQIDにありがちな、
黒からの...Bb4というピンと...f5突きには注意すればe4d4型を理想的に保ちやすいです。
1. d4 Nf6 2. c4 g6 3. Nf3 Bg7 4. g3 d6 5. Bg2 O-O 6. Nc3 Nbd7 7. O-O e5 8. e4 c6 9. h3 Qb6 10. c5 dxc5 11. dxe5 Ne8
SF-LC0 白勝ち 63手 短手数勝ち部門 5位タイ
LC0-SF 白勝ち 93手
Mikhail Botvinnik VS Mikhail Tal
https://www.chessgames.com/perl/chessgame?gid=1032537
9...Qb6までは有名な試合があり、この試合以降10.c5!がクリティカルラインと
して知られるようになったと解釈しています。
SFはKIDのロングポーンチェイン構造になると苦手と言われていますが、
この形はSFにも扱いやすい形ですね。
LC0の明確な弱点は知られているのでしょうか?私にはよくわかりません。
1. e4 c5 2. Nf3 d6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 g6 6. Be3 Bg7 7. f3 O-O 8. Qd2 Nc6 9. Bc4 Qa5 10. O-O-O Bd7
SF-LC0 ドロー 101手
LC0-SF 白勝ち 76手 短手数勝ち部門8位(LC0の中では1位)
白が2-0で勝ってるわけじゃありませんが、LC0の中では最速の勝ち方をしてたので記載。
ユーゴスラブにたいして9...Qa5はマイナーラインだと思います。
たしかにアクセラではある手筋ですし、ユーゴスラブに対しても悪くない気もしますが・・・?
1. e4 e5 2. Nc3 Nf6 3. Bc4 Nxe4 4. Qh5 Nd6 5. Bb3 Nc6 6. Nb5 g6 7. Qf3 f5
SF-LC0 白勝ち 93手
LC0-SF ドロー 66手
フランケンシュタインドラキュラアタックです。
序盤から黒はエクスチェンジダウンを食らいますが展開・スペース得
でなんとかするという変化です。
マスター間でも冗談定跡となっていると思いますが、エンジン同士ですと白良しくらいなのかな。
1. e4 e6 2. d4 d5 3. e5 b6
SF-LC0 黒勝ち 93手
LC0-SF 白勝ち 109手
フレンチアドバンスでb6を突いた形。フレンチの困り駒であるc8Bをa6に展開する狙い。
非常に興味深い局面 白でも黒でもLC0が持った色が勝っている
4.c3と指したSFは白で負けて4.h4と指したLC0は白で勝っているが・・
1. e4 g6 2. d4 c6
SF-LC0 白勝ち 82手
LC0-SF 白勝ち 88手
白のクラシカルセンターにたいして、黒は心もとない形。
力戦になりやすいので、具体的な変化じゃrefuteできませんが白がいいはず。
1.d4
SF-LC0 ドロー
LC0-SF ドロー
1.d4という手に対してSFもL0も1...Nf6で返して、ニムゾオーダーのQGD型となりました。
1.d4にたいしての最強の応手は1...Nf6なのか?興味が沸きますね。
1.e4
SF-LC0 ドロー
LC0-SF ドロー
LC0は1.e4にたいしてベルリンを選択、SFは1.e4にたいしてナイドルフを選択して両者ともドロー。
人間のマスター間と似たような答えが出るとは・・
最高の手を考えた時、エンジンも人間も共通してるのだと改めて感動。
1.e4 g6 2. d4 d6 3. Nc3 a6
SF-LC0 ドロー 35手 短手数勝ち部門 2位
LC0-SF 黒勝ち 196手 長手数勝ち部門 1位
全対局中黒が勝った局面は2つしかないがそのうちの一つ。タイガーモダンみたいな形ですね。
漏れがあったら申し訳ない。読んでくれてありがとうございます。